ケリー米国務長官が14日夜にモスクワを訪問し、プーチン大統領、ラブロフ外相と相次いで会談して、シリア問題について意見を交わした。15日のラブロフ氏との会談では、フランス・ニースでのテロを受け、テロ対策で米ロ協力を進める必要があるとの認識を双方が確認した。
ラブロフ氏は会談の冒頭で、ニースのテロに触れて「我々の作業の緊急性が明らかになった」と指摘。出席者に犠牲者に黙禱(もくとう)を捧げるよう呼びかけた。ケリー氏は、シリアが世界最大のテロの温床だとの見方を示したうえで「世界中の人々が我々が成果を出すのを待っている」と強調した。両氏は15日夕、モスクワのフランス大使館を訪れ、追悼の献花と記帳をした。
ケリー氏は14日夜にはプーチン氏と約3時間にわたって会談した。米国務省によると、ケリー氏はアサド政権による度重なる停戦合意違反に懸念を表明。シリア全土での停戦実現や、政権移行に向けてアサド政権と反体制派が協議できるような条件作りについて意見交換した。過激派組織「イスラム国」(IS)やアルカイダ系武装勢力「ヌスラ戦線」への軍事圧力を増す必要性についても協議した。
ただ、ロシアのペスコフ大統領報道官によると、米ロ間のシリアでの直接的な軍事協力は議題にならなかった。ペスコフ氏はシリアのアサド大統領の処遇についても「ロシアの立場は変わっていない」と述べ、退陣を求める米側との歩み寄りがなかったことを明らかにした。(モスクワ=駒木明義、ワシントン=杉山正)