試合に敗れ、応援スタンドを通って球場を後にするPL学園の選手たち=15日午後、大阪府東大阪市、内田光撮影
最後の「逆転」は、かなわなかった。15日の第98回全国高校野球選手権大阪大会。今夏限りで休部となるPL学園が東大阪大柏原との初戦で、6―7で惜敗した。「逆転のPL」の伝統を胸に最後まで戦い抜いた3年生12人(選手登録は11人)に、観客やOBらから惜しみない拍手が送られた。
PL学園主将「伝統が終わり、責任感じる」最後の夏敗退
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「頑張れ!」。午後2時1分。試合開始のあいさつの後、選手たちが散ると大きな拍手がわき起こった。
先取点を奪ったのはPL学園。一回表に2点をリードした。だが、その裏、先発投手の藤村哲平君が2点を失い、二回にもピンチを招いて降板した。主将で捕手の梅田翔大君の継投がアナウンスされると、球場がどよめいた。
「しっかり勝負する背中を野手に見せたら応えてくれる」。梅田君は思い切り腕を振って投げた。二回裏に3点を奪われたが、三~六回の裏はスコアボードに0を並べた。PL学園は六回表、水上真斗(みずかみまきと)君の2点適時打で1点差に詰め寄った。
「逆転のPLだ」。梅田君はそう信じた。七回表、マウンドを譲った3番の藤村君が左翼越えの2点本塁打を放ち、6―5と逆転。藤村君は「最後まであきらめずに戦い抜くこと」。それだけを考えていた。
試合前日の14日、PL学園を不運が襲った。守備練習で仲間と交錯した正二塁手・河野友哉君が左太ももを骨折。正選手1人を欠いたのは大きかった。「絶対に勝ち、また一緒にプレーしよう」と前夜のミーティングで話していた。河野君はベンチで立ち続けて声を出した。「逆転できるとみんなが信じていた」
七回裏に追いつかれる。「♪ああ、PL、PL、永遠(とわ)の学園……」。応援席から、励ますように校歌の大合唱も始まった。
しかし、八回裏に勝ち越され、惜しくも敗れた。
試合後、東大阪大柏原の校歌を聞き終えると、選手たちは泣き崩れた。昨年に新規の部員募集を停止したため人数が乏しく、実戦練習が不足した。野球をよく知る監督もいない。そんな中で迎えた夏。記録員としてベンチ入りした土井塁人君は「野球をする環境は厳しく、重圧を背負いながら野球をしてきた。僕らほど苦しい思いで野球をした高校生はいないのでは」。
勝利した東大阪大柏原の西島幹太主将は「PLには、あきらめない伝統があるとわかった。一球一球に対する気持ちの強さが伝わってきた」とたたえた。