同志社大大学院の内藤正典教授
トルコで起きたクーデターの動きについて、国内外の識者にその背景や影響を聞いた。
特集:トルコでクーデター未遂
■計画周到だがクーデターとは呼べない 内藤正典・同志社大大学院教授(現代イスラム地域研究)
今回の反乱は、首都アンカラや最大都市イスタンブールなどで展開され、かなり周到に計画されたことは明らかだ。エルドアン大統領は南西部で静養中で、このタイミングを突いたのだろう。
ただ、クーデターとは呼べない。トルコではこれまで3回、クーデターが成功しているが、いずれも内政が混乱した末に軍が政権を奪取した。その際は参謀総長がトップとなり、陸海空軍と憲兵隊が結束して政治に介入した。だが、今回はあくまで一部の軍人による反乱でしかなかった。
トルコ軍は、イスラム教の政治介入を認めない「世俗主義」の原則を支持してきた。エルドアン政権は最近、これをやめる方向を打ち出し、反発した軍の一部が反乱を起こした可能性はある。だが、多くの国民は支持しないだろう。
エルドアン政権の近年の独裁化、強権化を嫌う国民も多く、反乱側はそうした人たちの支持を期待したのだろうが、直前の政権支持率は約5割に上る。特に貧困層には手厚い政策をとっており、支持は盤石だ。
ただ、今回の反乱で軍が一枚岩ではないことが露呈し、過激派組織「イスラム国」(IS)などに弱みを見せる形になった。トルコが不安定化すれば中東情勢に与える影響は大きく、難民問題に直面する欧州への影響も避けられないだろう。(聞き手・高野遼)
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