炎の中で助けを求める少女
被爆者から体験を聴き取り、若者が描く「原爆の絵」。広島平和記念資料館(原爆資料館)が始めた取り組みは12年がたち、作品は120点にまで増えた。若い世代が視覚に訴える試みは、被爆体験をより鮮明に伝える力になっている。
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「布団のつぎはぎ、けがの細部まで、よく描けたね」。広島の被爆者で在日韓国人2世の李鐘根(イジョングン)さん(87)は6月末、広島市立基町高校を訪れ、17歳のころの自分と亡き母親を描いた油絵を見て感心した。
作者は同校3年の美術部員、久保友莉乃(ゆりの)さん(18)。昨年夏から李さんと10回ほど面談。原爆で大やけどを負った李さんの首にわくウジ虫を、母が箸でつまみ取る姿を描いた。
被爆者と若者が共同で「原爆の絵」を仕上げる作業は2004年、被爆体験を後世に伝えようと原爆資料館が始めた。地元の高校生らが被爆者から描いてほしい場面を聴き、1年がかりで完成させる。これまでに被爆者30人、学生100人以上が手を取り合った。
あの日、李さんは広島鉄道局に…