同僚と笑顔で雑談する筆者=8月5日、東京都中央区築地の朝日新聞東京本社で、瀬戸口翼撮影
いきさつは忘れたが、あなたは何のために記事を書いているの? と問われたことがある。静岡県の沼津支局で働いていた20代後半。相手はひとつ先輩の女性記者だった。
リスクも語ってほしい がんと闘う記者が感じた参院選
何を今さらと思い、「世の中を変えるためじゃないですか」と答えると、いきなり「それは違う」とはねつけられた。「それはあなたの思い上がりなの。あなたは傲慢(ごうまん)なの」
彼女は遠くのフリースクールまで通い、そこに集う若者たちに寄り添って連載をするような記者だった。かたや私はといえば、身近な政治や行政のありようなど、どちらかといえば硬めのテーマに関心があった。
そのとき、2人とも酔っていた。だが、彼女の言葉は、酒の勢いばかりではないように聞こえ、思わずあなたはどうなんですかと問い返した。
「書いたら、祈るの」。胸の前で両手を組み合わせ、彼女は続けた。「世の中を『変える』じゃないの。『変わってくれたらいいな』と、祈るの」
「どっちも同じじゃないですか…