全校生徒を前に、プロジェクターを使って平和教育の授業をする大城航さん=2018年6月15日午後、那覇市の県立那覇高校、河合真人撮影
戦後73年を迎える沖縄で、平和教育の形を模索する若い担い手たちがいる。共通するのは、討論を通して理解を深め「いま」につながる視点を鍛える手法。昨秋には沖縄戦で住民が「集団自決」した洞窟が「肝試し」の少年らに荒らされる事件が起きた。「記憶の継承」が改めて課題となる中、試行錯誤が続く。
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那覇市の県立那覇高校で15日、平和教育の特設授業があった。テーマは「『慰霊の日』はいつにするべきか」。約1300人の全校生徒が各教室で5~6人の班になり意見を交わした。
「沖縄慰霊の日」は沖縄戦の組織的戦闘が終わった日とされる。「なぜ6月23日に手を合わせるのか、考えてみよう」。講師の大城航(わたる)さん(36)が促した。
最初はうつむいていた多くの生徒たちが、次第に口を開く。「組織的な戦闘が終わっても犠牲者がいた。沖縄戦が終わった日とは言えないんじゃない?」「県内では場所によって犠牲者が出た時期が違う。地域ごとに慰霊の日を設けるのはどう?」。大城さんは班を回って見守るだけだ。
授業後、3年生の赤嶺伶於(れお)さん(17)は「人によって意見は違うんだなと感じた。これほど深く慰霊の日について考えたことはなかった」と語った。
大城さんは県立高校で社会科教員を11年勤めた。平和教育を担当することもあり、どんな授業が生徒の心に届くのか考えてきた。
体験者呼べず「何をすれば」
沖縄の大半の学校では、6月に沖縄戦を題材にした特設授業がある。体験者の話を聞くのが一般的だったが、近年は高齢化で来てもらうこと自体が難しくなりつつある。一方で、3年ほど前から「平和教育で何をすればいいかわからない」という相談を他校の教員から受けるようになった。
授業時間の確保を優先する動きもある。大城さんがいた学校では年2回、生徒が戦跡を巡る行事があったが、管理職から減らすよう求められた。受験対策で授業時間を増やすためだ。
「普段の授業で、もっと戦争や平和について考えることができないか」。そんな問題意識が強くなり、昨春退職した。いずれ沖縄戦の体験者も、本土復帰前を知る人もいなくなる。その先を見据えた仕組みが必要とも考えている。
昨年9月、「集団自決」が起きた読谷村(よみたんそん)の洞窟「チビチリガマ」を、地元の16~19歳の少年たちが荒らす事件が起きた。県警の調べに、全員がチビチリガマでの悲劇の歴史を「知らない」と答えたと報じられ、教育関係者に衝撃を与えた。
でも、ほとんどの生徒たちは、きちんと話せば理解し、納得してくれる。一方で、自分の意見を持って話し合う力も必要だと思う。だから、生徒間の討論を重視している。
「今に至る沖縄の課題を解決する力にもつながるのではないか」
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