四回のピンチで汗を拭う北海の投手大西=林紗記撮影
(21日、高校野球 作新学院7―1北海)
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1年間、リベンジを誓ってやってきた――。北海のエース大西健斗主将(3年)は昨夏の甲子園、開幕戦で途中登板したが1死もとれず3失点し降板。悔しさしか残らなかった。
再び甲子園のマウンドに戻った今夏。決勝まで勝ち上がる原動力となった。
準決勝までの4試合36回をすべて完投。初優勝をかけた5試合目。さすがに「疲れはあった」。
四回、持ち味の直球が高めに浮き、制球が定まらない。エースの球を受け続けてきた佐藤大雅捕手(2年)も「真っすぐの球威と変化球の切れが、いつもよりなかった」。先頭打者に四球、次打者に二塁打を浴び、さらに四球で無死満塁。失策と2連打でアウトを取れずに3点を奪われた。5試合目で初めての途中降板。レフトに移り、マウンドを多間隼介投手(2年)に譲った。
外野から後輩の力投を見守った。多間投手が三振を奪うと、笑顔で拍手を送った。「多間は決勝の舞台で三振も取った。去年の自分と比べて、素晴らしい投手」とたたえた。
敗戦後のベンチ。悔し涙を流す選手もいる中、甲子園で527球を投げた大西主将は「最後までやりきったぞ」と笑顔で仲間に声をかけた。昨秋の初戦敗退から始まったチームが、甲子園の決勝まで勝ち上がった。「最低で、最高のチームでした」と大西主将。さらに「仲間の大切さを学んだ、幸せな北海での野球だった」と晴れやかに言った。(布田一樹)
■家ではのんびりした子
試合終了の時は、突然やってきた。九回裏2死一、二塁から果敢に三塁を狙った走者がタッチアウトになった瞬間、満員の三塁側アルプス席から「ああー」と声が漏れた。次の瞬間、自然と拍手が起こり、「よくやった」「ありがとう」の大きな声が響いた。
大西健斗投手の母親・まゆみさん(49)は北海道神宮で買ったお守りをにぎりしめながら応援。「家ではのんびりした子。こんなに気持ちの強い子だったなんて……」
両親は幼い頃から「困ったときは笑顔」と教えてきた。「高校では相手あっての野球ということを学んだのだと思う」。大西投手が勝利直後にいつもしている相手ベンチへの一礼は自分から始めたという。「甲子園を通じて、立派な野球人になってくれました」