視覚障害がない人を主に受け入れる「あん摩マッサージ指圧師」の養成施設の新設を認めないのは、憲法が保障する「職業選択の自由」を制限しているとして、大阪市の学校法人が国に認定を求め、大阪、東京、仙台の各地裁に提訴した。国は「視覚障害者向けに確保すべき職業」として認定しておらず、法人側は9日に大阪地裁で開かれた第1回口頭弁論で「根拠があいまい」と訴えた。
原告は「平成医療学園」とその関連法人。訴状によると、法人側は昨秋、厚生労働省と文部科学省に対し、健常者と弱視者を対象にしたあん摩マッサージ指圧師の養成課程の導入を申請したが、今年2月までに不認定とされた。
「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(あはき法)は、あん摩業が視覚障害者に適しているとして優先措置を規定。健常者の参入で視覚障害者の生計維持が困難になると国が判断すれば、健常者向け養成施設設置を「当分の間」認めないことができるとしている。しかし、この規定は1964年の改正後、見直されていない。
法人側は「50年以上前の規定で、『当分の間』ははるかに経過している。結論ありきとしか考えられない」と訴えている。
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《あん摩マッサージ指圧師》 国が認定した養成施設で技能・知識を修得し、国家試験に合格すると得られる国家資格。従事者は約11万3千人(2014年現在)で、そのうち約2万6千人が視覚障害者。厚生労働省によると、国認定の養成課程は全国に約170(定員計約2700人)あり、半数は「はり師」「きゅう師」の養成も同時に実施している。