集会を開き安保関連法の廃止を訴える市民ら=19日午後、大阪市西区、筋野健太撮影
安全保障関連法の成立から1年がたった19日、安保法廃止を求める集会が大阪市西区の靱公園であった。市民グループや労働組合の約5千人(主催者発表)が参加。「9月19日を忘れず声を上げ続ける」とする決議が読み上げられた。安保法に危機感を抱き、立ち上がった人々の模索は続く。
国会前で安保法反対デモ 成立1年、自衛隊任務に抗議
演劇人らがサイレントスタンディング 安保法成立1年
「参院選で改憲勢力が3分の2を超えた。でも、悲観も楽観もしている暇はない。何度でも、効果的な一手を打ち続けましょう」
8月に解散した学生団体「SEALDs(シールズ) KANSAI」の中心メンバーだった神戸大大学院博士課程の塩田潤さん(25)はこの日のスピーチで、安倍政権下で進む改憲の動きをけんせいした。集会後のデモで「野党はがんばれ」「民主主義って何だ」と久しぶりのコールをし、中心となって盛り上げた。
シールズ関西は昨年5月に発足し、街頭に立ち続けた。「一人ひとりが考え行動すること」を大切にし、代表や意思決定機関を設けなかった。だが、メンバーには「自分をしっかり持ってる人はいいけど、僕は何をやればいいかわからなかった」「やり方を示すのが団体の役目では」と戸惑う声もあった。安保法廃止を訴える野党候補を応援した参院選では、組織政党との力の差も痛感した。
しかし、個人の緩やかなつながりだからこそ輪が広がったという手応えもある。「政治と日常を近づけられたと思う」と塩田さん。「数年で社会が変わるとは思っていない。10年、20年と長いスパンで社会に働きかけたい」。10月末、他の市民と共に野党共闘に関するシンポジウムを開く予定だ。
昨年6月に結成された「安保関連法に反対するママの会@大阪」も集会に参加。生後6カ月の長男を抱いた安居裕子さん(36)が「安保法廃止のために前を向いて進まなきゃ」と壇上で語りかけた。
参院選後、会の名称を「子どもの未来を考えるママの会@大阪」に変えた。安保法に反対する署名集めや勉強会は続けるが、原発、保育所、学費、環太平洋経済連携協定(TPP)なども学び、問題提起していきたいという。
参院選でメンバーは大阪選挙区の民進、共産両党の候補からスピーチを頼まれた。だが、ためらいもあった。安保法反対は全員一致。でも、他の政策の議論を会の中で深めたことがなかった。選挙後、「政党の支持者だと思われたかも」「政党に利用されたのかな」と、政党との距離感について意見が噴出した。
5歳の息子を育てる小林真知子さん(35)は民進候補の応援で2回マイクを握った。冷たい視線も感じたが、勇気を出してよかったと思う。「政治に関わることをタブーにしたくない。大切だと思ったことは自分で言いたい」と話す。
野党共闘を後押しするために「みんなで選挙☆ミナセン大阪」をつくった市民らも集会に参加した。
運動が無関心層に届いたか確信はない。参院選後の会合では、チラシに書いた「生きづらい世の中を一緒に変えませんか?」という文に対し、若者から「わかりにくいポエムのよう」と言われたというエピソードも紹介された。
共同代表で弁護士の小谷成美さん(39)は「私たち以外の人をどれだけ巻き込めるか。次の衆院選に向けて準備をして、結果につなげたい」と意気込む。
東京・国会前でも19日、市民ら約2万3千人(主催者発表)が抗議デモをし、自衛隊の任務拡大などを批判した。(花房吾早子)
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安全保障関連法の成立から1年となる19日、愛知、岐阜、三重の東海3県でも安保法廃止を訴える集会やデモがあった。
名古屋市中区の白川公園では、弁護士らが発起人の「安倍内閣の暴走を止めよう共同行動実行委員会」が集会を開いた。雨の中、約2千人(主催者発表)が参加した。主催者共同代表の中谷雄二弁護士は「市民が声を上げることをやめれば、世論は沈静化する。互いに励ましながら運動を進めよう」と運動継続を訴えた。集会後、周辺を「憲法改悪、絶対反対」と訴えてデモ行進した。
栄の繁華街では、母親らでつくる団体「全国ネットママの会@愛知」の約15人がアピール行動。「だれの子どももころさせない」と書いた横断幕を持ち、通行人にチラシを配って、安保法制や自民党が憲法改正草案に盛り込んだ緊急事態条項への反対を呼びかけた。
チラシの受け取りを断る人も多く、参加した名古屋市の増田奈緒子さん(39)は「のど元過ぎれば、という感じ。これからは何が問題なのかを伝えていかなければ」と語った。(保坂知晃)
長崎市や大分市でも、安全保障関連法の廃止を訴える集会があった。