360度の映像シアターで、オーケストラの音響を楽しめる展示もある=ロンドン、石合力撮影
指揮者が振り下ろす指揮棒が目の前に迫る――。世界的に著名な英国のフィルハーモニア管弦楽団が、立体的な映像のVR(バーチャルリアリティー)でオーケストラを楽しむソフトを開発し、本拠地ロイヤル・フェスティバルホール(ロンドン)で公開した。
ゲーム機などに使うVRヘッドセットをかぶると、360度の映像が現れ、演奏会のステージ上に座ったように感じられる。目の前にいる同楽団の首席指揮者エサ・ペッカ・サロネンが指揮棒を振ると、右からバイオリン、左からチェロの音が聞こえ、演奏する様子も見られる。
映像に、人間の耳の位置に合わせ、鼓膜に届く状態で録音するバイノーラル方式のマイクを4セット(8本)使った音声を組み合わせた。同楽団によると、著名オーケストラによるVRの試みは初めてという。
同ホール内には、VR体験コーナーとは別に、演奏中の音を、各楽器パートの位置別に体験できる映像音響シアターも併設。聴衆の席では体験できない音響が味わえる。
同楽団のデジタル担当ルーク・リッチー氏は「新技術を使って新たな聴衆を開拓したい。ソニーと協力してプレイステーションVRでも楽しめるようにする」と語った。同楽団は来年5月に来日公演を予定しており、その際にもVR映像などを公開する予定という。ロンドンでのVR体験コーナーは2日まで。(ロンドン=石合力)