仮設住宅の建設場所を話し合う参加者=東京都豊島区
大災害を想定し、住民自らが前もって復興の方針を考えたり、被害を抑えるまちづくりを進めたりする試みが広がっている。「事前復興」と呼ばれる取り組みだ。熊本地震を受けて、減災にもつながると改めて注目されている。
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8月27日、東京都豊島区の会議室。集まった住民ら約70人は、地図を囲んで仮設住宅の建設場所について話し合った。震災後の地域復興を考える取り組みで、住まいや仕事など被災生活の課題や、重視すべき復興方針についても議論した。
参加するのは、木造住宅密集地域のある地区の住民ら。5月から始め、これまで阪神大震災の被災者の講演を聴いたほか、街を歩いて防火水槽などを確認してきた。参加者は、こうした経験を踏まえて「復興街づくり方針」を話し合い、年内に地域に報告する。
豊島区が主催する取り組みは2009年以降、住宅密集地域がある5地区で実施された。「行政だけが主導する復興ではうまくいかない。事前に地域で復興方針を話し合ってほしい」と担当者は説明する。
事前復興が注目されるきっかけとなったのが、95年の阪神大震災だ。復興に向けた区画整理事業が、一部地権者との交渉が難航するなどして、兵庫県内で終えるのに16年を要した。東日本大震災や熊本地震の被災地でも、仮設住宅の候補地のリストアップといった事前準備が足りず、復興の足かせになった。