強姦(ごうかん)罪などで服役中に被害証言がうそだとわかり、再審で無罪となった男性(73)と妻が5日、証言の裏付けを怠った捜査や冤罪(えんざい)発覚につながる証人尋問を認めなかった公判は違法だったとして、国と大阪府を相手取り、慰謝料や逸失利益など計約1億4千万円の国家賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
男性は、当時10代の同居女性に対する強姦などの罪で2008年9~11月に逮捕・起訴された。一貫して無実を訴え続けたが、大阪地裁は09年5月に懲役12年の判決を言い渡し、最高裁で11年4月に確定した。
ところが、女性が14年に「被害はうそ」と告白。男性は同9月に再審請求した。その後の大阪地検の調べで、女性が受診した医療機関のカルテに「性的被害の跡はない」との記載があることが発覚し、地裁は再審開始を決定。女性は母親から被害を受けたのではないかと問い詰められ、事実と異なる説明をしていたと判明し、15年10月に無罪が言い渡され、即日確定した。
訴状で男性側は、母親が複数の医療機関に娘を連れて行ったと証言していたのに、捜査機関はカルテの確認を怠った▽受診歴の確認のため、控訴審で弁護側が母娘の証人尋問を求めたが、裁判官は認めず、真相を見逃した――などと指摘。この訴訟で、誤判の責任を明らかにするべきだと求めている。
大阪地裁は再審を検討していた…