ダム建設の場合、一部が水没する県道の付け替え工事。2018年度末までに全長約10キロの道路が完成する予定=16年8月4日、大津市上田上牧町
2009年に国が建設を凍結した大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)。国は8月に建設事業継続を決定したが、すぐに本体工事を実施する状況ではなく、今後の見通しが立たない状態が続いている。
■見直し議論後、国が方針
大戸川ダムは1968年に国が多目的ダムとして建設を計画したが、水需要の減少などを理由に05年に事業計画が中止になり、07年に治水専用に変更して計画が再開した。洪水時の総貯水容量は約2210万立方メートル。周辺工事を含む総事業費は約3500億円で、本体工事1162億円は国が7割、残りを大阪、京都、滋賀3府県が負担することになっている。
しかし、地方へも財政負担を求める国直轄事業の見直しなどの議論が高まるなか、嘉田由紀子・滋賀県知事や橋下徹・大阪府知事(いずれも当時)ら三重県を含む4府県の知事が08年に反対の共同意見を表明。国土交通省は09年3月、「ダム本体工事については中・上流部の河川改修の進捗(しんちょく)状況とその影響を検証しながら実施時期を検討する」とし、今後20~30年の事業を決める河川整備計画を変更し、建設を凍結した。
今年に入って、国交省が「事業継続」案を示し、滋賀、京都、大阪の各府県はいずれも同意。国交省は8月25日、この方針を決めた。しかし、工事再開には計画の再変更が必要で、各自治体とも凍結解除には慎重な姿勢を示す。このため、国交省近畿地方整備局は「凍結が覆るわけではない」としている。