国家ぐるみのロシアのドーピング問題などを受け、国際オリンピック委員会(IOC)は8日、スイス・ローザンヌでスポーツ関係者を集めた「五輪サミット」を開き、より実効的なドーピング対策の構築について議論した。IOCは討議内容を宣言にまとめ、11月の世界反ドーピング機関(WADA)の会合で検討することを求めた。
ドーピングの深い闇
宣言は、WADAに、さらなる独立性やガバナンスの強化などを求める内容。WADAの中に新たな検査組織を作るほか、WADAに選手の代表者を参加させることや、ドーピング違反の内部告発者を守る仕組みづくりの必要性にも触れた。これまで各競技団体などが判断していた陽性反応が出た選手への処分は、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に委託し、透明性を高める提案がされた。
選手だけでなく、ドーピングを助長するコーチ、医師など選手の周辺者に刑事罰を科す仕組みづくりも提案。WADAがハッカー集団にサイバー攻撃を受け、機密情報が漏れた事案を問題視し、セキュリティー強化の項目も盛り込まれた。
IOCとWADAは、国家ぐるみのドーピング隠しが明らかになったロシアのリオデジャネイロ五輪出場を巡って意見が対立。だが今回の宣言では、IOCがWADAの権限強化を提言し、バッハ会長も「ドーピング撲滅に向けて戦うための提案だ」と強調した。バッハ会長によると、WADAのリーディー委員長は2018年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪までに、宣言に基づいて新しい態勢を作り上げる努力をする意向を明らかにした。
リーディー委員長は「全ての建設的な提案を歓迎する。サミットはWADAや反ドーピング態勢を強化する一つのステップだ」とコメントした。
会議は非公開で行われ、IOCやWADAの幹部のほか、陸上、水泳、サッカーなどの国際競技団体の会長や、米国、ロシアなどの各国オリンピック委員会会長、国際パラリンピック委員会(IPC)のフィリップ・クレーブン会長らが招かれた。