記者会見する経団連の榊原定征会長=11日午後、東京都内
経団連は11日、3年連続で会員企業に政治献金を呼びかける方針を表明した。各党への政策評価では自民党の評価が最も高く、安倍政権との蜜月が続く。ただ、「デフレ脱却」に向けた政権からの賃上げ圧力は強まり、経済界には「安倍一強体制」への警戒感も漂う。
「自民党を中心とする与党が内政・外交両面で実績をあげている」。経団連の榊原定征会長は11日の記者会見で、与党の政策を高く評価した。経団連が同日発表した主要政党の政策評価では、昨年の税制改正で法人税の実効税率を20%台に引き下げ、原子力発電所の再稼働を進める自民党の実績への高評価が目立った。
経団連は2014年、「社会貢献の一環」として、5年ぶりに会員企業約1300社に献金呼びかけを再開した。今年も昨年に続き、18日の幹事会で政治献金を呼びかける方針を正式に決める。献金先の政党について「各社の自主的な判断に任せる」と榊原氏は説明するが、「(献金先に)自民党が多いのは間違いない」と認める。
自民党本部の政治資金団体「国民政治協会」に対する企業や団体による献金は、13年の19億円から14年には22億円に増えた。政治資金収支報告書によると、14年には、榊原氏の出身企業である東レをはじめ、トヨタ自動車、新日鉄住金、キヤノン、住友化学といった歴代の経団連会長を輩出した企業のほか、その後不祥事が発覚した東芝や三菱自動車も献金していた。
榊原氏は「民主政治を維持するには相当のコストがかかる」と献金の意義を強調する。経団連は自民党の政策評価の「財政健全化と社会保障制度改革」の項目で、消費税率10%への引き上げが先送りされたことについてもふれた。課題として「19年10月の確実な引き上げ」を求め、「痛みを伴う社会保障制度改革に取り組むことを期待」とした。献金と同時に、経済界として政権の政策に厳しく注文をつけることも今後は問われる。