熊本地震の発生から半年。未曽有の「2度の最大震度7」が襲った被災地では、多くの避難者が応急仮設住宅などへ移り、生活再建へ向かう下地が少しずつできつつある。変わっていく風景がある一方、依然として倒壊した住宅や寸断された道路、復旧の見通しが立たない文化財が残る。復興への道のりは、始まったばかりだ。
フォト定点観測「復興どこまで」
特集「熊本地震」
■見通せぬ被害全容
死者数と住宅の全半壊棟数
熊本地震の被害の全容は、今も明らかにならない。地震に起因する「災害関連死」の犠牲者や、被害住宅の数が増え続けているからだ。
家屋の倒壊などによる直接的な死者は50人。一方、車中泊の後にエコノミークラス症候群(肺塞栓(そくせん)症など)を発症したり、地震時のけがや環境の変化が原因で亡くなったりした「関連死」の死者は時を追って増え、直接死を上回る55人にのぼる。6月の豪雨の際、地震でゆるんだ地盤が招いた土砂崩れで亡くなった5人も「地震の死者」と認められ、犠牲者は熊本県内の計110人になる。
被害を受けた住宅は、全半壊に一部損壊も含めて熊本県で約17万棟、大分県で約7900棟。直下を断層が走る熊本県益城町では、全1万戸の98%以上が被災する甚大な被害が出た。
さらに今も新たな被害が加わっている。支援金の額などが決まる罹災(りさい)証明書の発行に向け、被害程度を区分する調査が続いているためだ。1次調査は建物の外観で見るが、不服として2次調査に進めば内部の状態も含めて判断される。被害程度が重くなるケースが多く、2次調査を依頼した人は全体の3割近くに上る。
■仮設住宅の建設進む
避難者数(熊本県)と仮設住宅の戸数
本震翌日の4月17日に18万人を超えた熊本県内の避難者数は、およそ半年で約200人まで減っている。855カ所を数えた避難所も集約が進み、残るのは10カ所程度。今月末には、約100人がいる益城町の避難所が閉鎖される予定で、避難者「ゼロ」へ近づいている。
家を失った人の当面の住まいとして、応急仮設住宅が整備されていったことなどが要因だ。最初の仮設は6月3日に完成し、これまでに16市町村で4千戸余りが入居可能になった。さらに200戸超の増設が予定されており、今なお残る避難者には完成を待つ人も多い。100カ所ほどの仮設団地では、集会場や自治会組織づくりが進んでいる。
一方、熊本市や隣接する都市部では、自力でアパートなどを探して申請する「みなし仮設」を選択した被災者も多く、その数は1万戸を超える。
災害救助法では、仮設住宅の入居期限が2年と定められている。しかし、生活再建のめどが立たない人もおり、阪神・淡路大震災では解消までに5年かかった。東日本大震災の被害を受けた岩手、宮城、福島県では5年を超えた今も4万人以上が仮設で過ごしている。
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