国民向けの談話を発表し、チェ・スンシル容疑者をめぐる疑惑について謝罪する韓国の朴槿恵大統領=4日午前、ソウル、東亜日報提供
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は4日午前、機密文書を支援者のチェ・スンシル容疑者に渡していた問題などをめぐり、「必要なら私も検察の調査に誠実に臨む覚悟だ」と述べた。実現すれば現職大統領が捜査を受けるのは初めて。ただ、憲法の規定で大統領は在職中、刑事訴追を受けない。
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朴大統領「大きな責任を痛感」 国民向け談話全文
朴氏は大統領府で国民に向けた談話を読み上げた。チェ容疑者をめぐる疑惑について「とうてい言葉では言い表せないほどの失望と心配をおかけした点についてもう一度、心から謝罪します」と語った。「責任を深く痛感している」とし、「国民の皆様に許しを求めます」と述べた。
ただ、一連の疑惑については捜査に影響を与えかねないとして、「今後、機会があれば明らかにする」と述べるにとどめ、具体的な説明は避けた。一方で、「誰でも今回の捜査を通じて間違いが明らかになれば、それ相応の責任を負うべきであり、私もすべての責任を負う覚悟ができている」と語った。
自身の進退については「国内外の様々な懸案が山積しているだけに国政は一刻も中断されてはならない」と述べ、引き続き、大統領を続ける考えを表明した。「与野党代表と頻繁に意思疎通をし、国民の皆さんと国会の要求をさらに重く受け止める」とし、協力を求めた。
朴氏は新首相に野党系の人物を指名しているが、具体的な今後の政権運営については語らなかった。大統領府関係者は「大統領は閣僚の任命などの権限を首相に渡すという前提で話した」と説明した。
一方、韓国検察当局は4日、朴氏の最側近の一人だった前大統領府付属秘書官のチョン・ホソン容疑者を公務上秘密漏洩(ろうえい)などの疑いで3日夜に逮捕したと明らかにした。チェ容疑者への機密文書提供に関わっていたとされ、検察当局は提供の経緯や朴大統領の指示などについて調べる。
チェ容疑者が私物化したとされる財団の設立をめぐっては、安鍾範(アンジョンボム)・前大統領府政策調整首席秘書官が経済界に資金を出すよう圧力をかけた疑いがもたれている。背景には朴氏の指示があったのではないかとの見方も出ている。
真相解明には朴氏への捜査が欠かせない。今後は捜査の方法や時期などが焦点になる。(ソウル=東岡徹)
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【朴槿恵大統領の対国民談話の骨子】
・事件で大きな失望を与えたことを心から謝罪
・全ての事態は自分の過ちで、大きな責任を痛感
・必要なら自身が検察の調査に誠実に臨む
・検察捜査が進行中で、具体的な事実を話すことは難しい
・懸案山積で国政は中断が許されない
・政府機能を一日も早く回復させなければならない
・各界と意思疎通をし、国民と国会の要求を重く受け止める