長男の幸誠ちゃんの写真を手にする棚橋恵美さん。「保育園に預けた自分をずっと責めてきました」=大阪市旭区、大久保真紀撮影
保育施設での子どもの死亡事故。何が起きたのかを知りたい――。認可外の施設が情報を隠しがちになるのは、補償制度が不十分なことが一因として、遺族が制度の改善を求めている。当初は原因不明の病死、乳幼児突然死症候群(SIDS)と判断されても、その後に施設の過失や虐待が判明したケースもある。
特集「小さないのち」
遺族らでつくる「赤ちゃんの急死を考える会」(事務局・東京都、会員約800人)が10月、約2万6千人の署名を添え、要望書を内閣府に出した。
認可保育所や幼稚園、小中高校の多くが加入する独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済は、子どもの死亡は過失の有無にかかわらず見舞金を出す。しかし、認可外は加入対象外で、過失があれば賠償する民間保険に入っている所が多い。考える会は、事故時に保険会社が施設の過失を認めようとしない傾向があるなどとして、認可外も同共済の対象にし、加入を義務化するよう求めている。
また、認可保育所などに対しては2015年度から重大事故の報告が義務化されたが、認可外は対象外。考える会は「漏れなく報告される仕組みが必要不可欠だ。真相が明らかにならないと再発を防ぐ検証は難しい」と6月に政府に申し入れている。
考える会の小山義夫・副会長は「施設からきちんとした説明がないことに遺族は苦しんでいる。認可施設に入れないのは保護者や子どもの責任ではない。認可施設と同様に手当てされるべきだ」と話す。
■窒息死 裁判で分かる例も
大阪市旭区の棚橋恵美さん(28)は2009年11月、生後4カ月の長男、幸誠(こうせい)ちゃんを認可外保育園で亡くした。ベッドで鼻血を出した状態で見つかった。司法解剖の結果、死因は「不詳」。当時いた2人の職員は「5分後に見ると冷たくなっていた」などと言うだけだった。幸誠ちゃんの様子を話すこともできなかった。
「真相を知りたい」。夫の勇太さん(28)と裁判を起こし、「うつぶせ寝の状態で放置されて窒息死した」と主張した。一審は「顔を横に向けていた」とする職員の話などを踏まえ、死因をSIDSと認定。訴えは棄却された。
だが、控訴審で園の元保育士が「日常的にまともに保育できる状況でなかった」と証言。昨年11月の判決では「窒息」と認定され、勝訴が確定した。
判決は、無資格の職員2人が1…