天皇陛下の退位をめぐり政府が設けた「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長=今井敬・経団連名誉会長)が7日、皇室制度や歴史などの専門家へのヒアリングを始めた。焦点となる退位の是非は、意見を述べた5人のうち2人が賛成、2人が反対するなど意見が割れた。
ヒアリングは非公開で、平川祐弘(すけひろ)・東大名誉教授、古川隆久・日大教授、ノンフィクション作家の保阪正康氏、大原康男・国学院大名誉教授、所功(ところいさお)・京都産業大名誉教授の5人が交代で約30分ずつ見解を述べた。
退位には保阪、所両氏が賛成した。退位を可能とする法整備については、将来的な皇室典範の改正を前提に特例法を容認する考えを示した。保阪氏は記者団に「陛下がお気持ちを述べているので、私たちの時代で新しい皇室典範をつくる(べきだ)」と主張。所氏は会議で「特例法を迅速に制定すべきだが、可能なら皇室典範の改正が望ましい」と指摘した。
平川、大原の両氏は退位に反対した。平川氏は会議後、記者団に「(天皇陛下が)ご自分で定義された天皇の役割を果たせないから退位したいというのはおかしい」と述べた。大原氏も記者団に、摂政制度の利用などで対応するのが望ましいとの考えを示した。
古川氏は退位に慎重な姿勢を示した上で、「退位を認める場合、皇室典範改正により恒久制度化すべきだ」と主張。記者団に「(特例法で)今の天皇陛下の意向を受け(て法整備す)る形になると、憲法に抵触する可能性が出てくる」と語った。