漱石が装丁にこだわった書籍や手紙が展示されている=愛知県犬山市
今年は夏目漱石没後100年。装丁やデザインへのこだわりに光を当てた企画展「吾輩ハ、デザイナーデモアル」が、愛知県犬山市の博物館明治村で開かれている。12月11日まで。
明治時代の書籍や手紙など約130点を展示。初の長編小説「吾輩ハ猫デアル」で、装丁や挿絵を担当した洋画家との手紙では、表紙について「上巻の金字は悪口で失礼だが無暗(むやみ)にギザギザして印とは思えない」と率直な感想をつづった。洋画家とやりとりを重ね、人間の姿をしたネコや、逆毛立つネコなど、多彩な挿絵が初版本を飾った。
代表作「こころ」では、漱石自らが装丁もした。表紙には、知人から提供された中国の石碑に刻まれた古代文字を利用するなど、趣向を凝らした。箱や扉の絵も自分で描いている。
企画した主任学芸員の中野裕子さんは「文庫本では見ることができない装丁やデザインを見てほしい」と話す。岐阜県多治見市から訪れた会社員の男性(48)は、「ここまで凝っているとは思わなかった。あらためて作品を読みたくなった」と話していた。
企画展の会場は明治村にある千早赤阪小学校講堂で、高校生以上200円、中学生以下無料。別途、入村料が必要。村内には、漱石の当時の住居も移築されて残っている。12月5日は休村。問い合わせは、博物館明治村(0568・67・0314)。(小松秀紀)