埋め戻しが進む陥没した現場の復旧工事が公開された=10日午後2時54分、福岡市博多区、小宮路勝撮影
福岡市のJR博多駅前の地下鉄工事現場で起きた大規模な陥没事故で、市は10日、主要部の埋め戻し作業を終え、報道陣に公開した。13日までにライフラインの復旧工事を終え、14日には道路が通行可能になる見通し。一方で、急な埋め戻しによって、地下鉄工事の再開が遅れる恐れがあるとの指摘も出ている。
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市は立ち入り禁止にしている陥没現場を、事故後初めて報道機関に公開した。陥没した約30メートル四方、深さ約15メートルの穴は、24時間態勢でセメントを混ぜた土約3千立方メートルが流し込まれ、地上から約3メートルの深さにまで埋め戻されていた。冷たい雨が降るなか、現場ではダンプカーが砕石を運び込み、ショベルカーがそれをならす作業が続いていた。
崩落の傷痕は深い。避難勧告が続くビルを見ると、道路の両脇まで土がえぐれ落ち、地下の基礎部分がむき出しだった。周辺のアスファルトには長いひびが走り、辺り一面に下水のような異臭も漂う。事故が起きた8日には穴の底に大量の水がたまっていたが、作業で流し込まれた土によって水面が押し上げられ、下水管に流れ込んだという。
11日以降は電気やガス、上下水道のケーブルや土管を埋め直したうえで舗装する。ただ、管の交換は応急処置で、一部を掘り返すため「仮復旧」という位置付けだ。14日には3棟のビルすべての避難勧告が解除され、道路が通行できるようになる見通しという。
現場で説明した福岡市交通局の岸本信恭工事事務所長は「埋め戻しの土が想定以上に早く固まった」と説明。市は当初、埋め戻すには3日程度かかると説明していたが、業者の手配を急ぎ、作業のペースを速めたことで、実質1日半で完了した。
しかし、急ピッチな埋め戻しを疑問視する見方もある。ある土木の専門家は「陥没部分を埋め戻したことで、地下鉄工事の遅れにつながるのではないか」と指摘する。セメントを混ぜた特殊な土で埋め戻し、復旧は早まったが、陥没部分がどう固まったか、周辺の地盤への影響はどうかなど、新たな地質調査が必要になるためだという。
10日に会見した市交通局の角英孝建設部長は、埋め戻しを急いだ理由として「ライフラインの復旧が先決」と説明。そのうえで「埋め戻しをしたあとで再度ボーリングをするなど、時間はかかるかもしれない」と述べた。
また角部長は、原因究明について、学識経験者などで構成する第三者委員会を設置する方針を示した。その上で「設置は市単独なのか国土交通省と合同なのかなど、詳細は決まっていない」と述べた。
市交通局に立ち入り検査をした国交省は10日、会見した。8、9日の検査で市から提供を受けた資料などを今後精査し、必要があれば再度検査するという。(小川直樹、岡田玄、土屋亮)