米ニューヨークで8日、民主党大統領候補クリントン氏の選挙集会があり、不安そうにテレビ画面を見つめる人たち=AP
「世界が壊れていく」「予見不可能」――。9日未明、トランプ米大統領の誕生が現実となると、世界に衝撃が走った。米国民が今の政治システムの破壊を選んだ「トランプ・ショック」。有権者の怒りや不満が、これまでの国際秩序を揺るがしかねない。
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8日夜、米大統領選の開票状況を伝えるメキシコの特別番組でトランプ氏の当選の可能性が高まると、コメンテーターは深刻な表情でこう訴えた。「メキシコは大きな危機に直面している。我々はこの現実に向き合わなくてはいけない」
トランプ氏はこれまで、メキシコ不法移民を「麻薬密売人」「強姦(ごうかん)犯」などと決めつけ、国境に壁を建設すると繰り返し主張してきた。北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを掲げており、公約が実現されれば、米国向けが輸出の約8割を占めるメキシコ経済に深刻な影響を与えるとみられている。通貨ペソは、トランプ氏の優勢が伝えられると一時13%以上も急落し、対ドルでこの約20年での最安値を更新した。
トランプ大統領の誕生に現実味が帯びると、ツイッター上で話題になった言葉を示すトレンドワードに「カナダ」がランクイン。カナダ入国管理当局のホームページが一時閲覧できなくなった。移民排斥を訴えるトランプ氏が大統領になる米国を嫌い、「多様性の尊重」を掲げるカナダ移住を考えた人たちのアクセスが集中した可能性がある。
振り返れば約5カ月前、世界は似たような「衝撃」を経験していた。
英国民が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を選んだブレグジット(Brexit)。この時も、世界の多くの人は「まさか」と高をくくっていた。当時の英国政府も国民の世論を読み間違え、統合を進めてきたEUはこれを機に方向転換を余儀なくされた。
そしてトランプ氏の当選が確実となり、駐米フランス大使はブレグジットを重ね合わせて「今やなんでもありだ。目の前で世界が壊れていく」、独法相も「これで世界が終わるわけではないが、事態はますます狂っていく」とツイッターで発信した。
来春に大統領選があるフランス…