米大統領選について話す識者ら=東京都港区のテンプル大学日本校
東京都港区の米テンプル大学日本校で10日夜、共和党のドナルド・トランプ氏が制した米大統領選を振り返るシンポジウムがあった。日米両国の学生や在日米国人ら約120人が参加し、トランプ氏の「暴言」が現実になることへの不安を訴える声が上がった。
特集:ドナルド・トランプ氏
米上院で勤務経験がある国際関係学科のジョシュア・デュプイ講師は、トランプ陣営が「草の根」に支えられたオバマ大統領の選挙運動をまねて、有権者を投票に行かせようとしていた、と指摘。事前予想で優勢とされていたクリントン氏が敗退した理由について「自己満足と(選挙に勝つための)モデル構築の失敗があった」と分析した。投票しなかった民主党支持者が一定数いたことも敗因に挙げた。
会場からは「メキシコ国境に壁を造り、クリントン氏を投獄するなどの発言は、すべて実行されるのか」との質問も。東京学芸大の菅美弥准教授(アメリカ史)は「メキシコ国境の壁より、在日米軍の駐留経費について負担増加を求めることの方が現実味がある」との見方を示した。
ほかにも、「(クリントン氏の敗退で)米国の女性差別があらわになった」「イスラム教徒や同性愛者の人権はどうなるのか」「長期の選挙戦にうんざりだ」といった悲観的な声が会場から続出した。全米各地では、トランプ氏の女性蔑視的な発言や差別的な移民政策に対する反発は強く、「私の大統領ではない」などとトランプ氏の勝利に抗議するデモが広がっている。
パネリストたちは「日は明日も昇る。前へ進もう」などと呼びかけた。(伊東和貴)