相手のパスを奪い、ボールを持ったまま駆け抜ける名城大の山本優作さん(左)=名古屋市瑞穂区
名城大(愛知)が4年連続でアメリカンフットボールの全日本大学選手権に出場する。活躍を支えているのが元高校球児たちだ。目指すのは大学日本一を決める「甲子園ボウル」出場。高校野球でもあこがれだった甲子園に向けて、今月始まった選手権に臨む。
名城大は、全日本出場を決めた秋季東海学生リーグで全勝優勝を果たした。49人いる男子部員の約7割は高校の硬式野球部出身者。東海3県でアメフット部がある高校は4校だけで、他競技の選手から人材を発掘しなければならないのが現状だ。
日本アメリカンフットボール協会によると、日本では高校よりも大学の方がチーム数が多い。関東や関西の一部の強豪大学を除けば、他競技から転向した選手が全国的に多くいるという。
名城大では、東邦、享栄、至学館、愛知啓成(いずれも愛知)、いなべ総合(三重)、福知山成美(京都)といった高校野球の強豪校出身者も多い。中には足の速さや投球のうまさ、チームワークを大事に行動できるなど、アメフットに生かせる能力をすでに持っている選手も目立つという。「有望選手の宝庫です」と槙野均監督(63)は明かす。
総合力が求められる野球に比べ、アメフットは投球、捕球、キック、タックルといった役割分担が明確だ。「野球で力を発揮しきれなかった選手も、何か一つ特技があれば活躍できる」と槙野監督。「花形」とされるクオーターバックも、名城大では投球が得意な元高校球児だ。
野球かアメフットか迷う選手を誘う際、必ずかける言葉が槙野監督にはある。
「一緒に甲子園に行こう」
甲子園ボウルの会場、阪神甲子園球場を「もう一度目指そう」と訴えるのだ。
主将の4年生、山本優作さん(21)も愛知の同朋高校野球部で主将を務め、大学でも野球を続けたいと思っていた。だが、「やるなら日本一を目指せる1部リーグの大学で」という父親の言葉に、「1部では活躍できないだろう」と考え直し、アメフットに賭けた。
試合を見たこともなかったが、同級生の経験者や先輩たちにルールを教わった。自信があった足の速さに加え、負けず嫌いの性格を見込まれて守備を任され、2年春からレギュラーに。「高校では遠い目標だった甲子園も、現実的に目指せるところにある。アメフットを選んでよかった」と山本さんは振り返る。
双子の弟で、中部大野球部で活躍し、社会人野球に進む小鉄さん(21)は「野球ではライバルだったが、今はお互いに刺激をもらっている」と兄をたたえる。
名城大は東海代表として13日正午から三重県の東員町スポーツ公園で、初戦を勝ち上がった北陸代表の福井県立大と戦う。甲子園ボウルまでには、さらに関西の強豪など3校を倒さなければならない。山本さんは「全員で心を一つにして、集大成を見せる」と意気込んでいる。(高岡佐也子)