認知症の疑いがあると判定された75歳以上の運転者に医師の診断を義務付ける改正道路交通法が来年3月に施行されることを受け、日本老年精神医学会(新井平伊理事長)は15日、認知症を一律に運転の制限対象とするのではなく、個人の能力を適切に評価して判断するよう求める提言を発表した。警察庁や厚生労働省などに同日、発送した。
改正法では認知症と診断されれば、免許の停止か取り消しになる。学会によると、認知症を引き起こす病気は複数あり、運転能力への影響もわかっていないことが多いという。
提言では、認知症対策を強化するという改正法の趣旨には交通事故防止の観点から賛同を示す一方、認知症の人の一律な運転制限には「今後の医学的エビデンス(根拠)の集積などに基づき、将来検討されるべきだ」とした。また、ドライブシミュレーターや教習所内の運転試験では、高齢者の運転能力を評価するには不十分とし、必要に応じて教習所外の実車テストの導入を検討するよう求めている。
このほか、高速道路の逆走を防ぐゲートの設置、自動ブレーキやペダルの踏み間違いを防ぐ装置を標準装備とすることなども要請した。
横浜市で10月に集団登校中の児童が死亡するなど、高齢者による交通事故が相次ぐ。同学会は「社会の安全を担保すると同時に、高齢者の尊厳を守り、生活の質を保証することが法の実効性を上げるために不可欠だ」としている。(武田耕太)