社員食堂だったスペースに並ぶ弁当を買う社員ら=大阪市住之江区の関西電力大阪南支社
オフィス向けのランチ市場が広がっている。「社員食堂がない」「昼休みを長く取りたい」「より健康的に」――。背景には、多彩なニーズがあるようだ。
豚しょうが、ナスみそ炒め、チキンカツ丼……。10月26日の午前11時半ごろ、関西電力の大阪南支社(大阪市住之江区)の地下1階に12種類、計80個ほどの弁当が並んだ。値段は税込みで420~600円。社員たちは「迷うなぁ」「きょうは塩サバかな」などと言い、買っていった。
同支社で弁当を販売するのは、東京・渋谷の企業向け弁当配達会社「スターフェスティバル」。事業の名称は「シャショクル」で、社員食堂のない所を中心に120事業所近くと契約している。
複数の飲食店が手がける約4千種類の弁当から日替わりで十数種類を契約先に毎日届け、80個以上を配達する場合は原則として販売員も派遣。契約先が「廃棄ロス」を抱えないよう、売れ残った弁当はスター社側が引き取る。
関電大阪南支社では、今春の改修工事で社員食堂が閉鎖中。社員ら約500人の昼食を確保するため、スター社と契約した。「支社のまわりはお店が少なく、社員が『ランチ難民』になるかもしれませんでした。弁当の種類も豊富で、社員食堂のように運営費もかかりません」と広報の担当者は話す。
社員の評判も上々だ。宮本圭祐さん(25)は「外では店の前で並ばなくてはならず、定時に支社に帰れるか心配でした。移動時間を省けて自分の時間として使えます」と話す。
弁当をオフィス内に貯蔵できる「置き弁」を手がける会社もある。
京都市南区の「アイヴィック」の弁当は、冷蔵庫に入れておけば賞味期限が配達日から4日間だ。冷蔵庫のリース代3万2400円を支払って申し込むと、週替わりの3種類の弁当(1個税込み650円)が毎週火曜に届く。スター社と同様、アイヴィックも売れ残った分を回収している。
2月にスタートさせた置き弁事業で掲げるテーマの一つが「ランチを通じた健康づくり」。添加物・保存料を使わず、メニューは管理栄養士らが監修。500キロカロリー前後に抑えている。夫婦共働きの社員が「置き弁」を子どもの晩ご飯として持ち帰る会社もあるという。
「社員の健康をどう維持するか悩む契約先も多い」と担当者。契約先は東京を中心に100事業所を超えたという。