トランプ氏のビジネス交渉術
安倍晋三首相が会談するトランプ次期米大統領は、公職に就いたことがなく、政治手腕は未知数だ。交渉術などを探る上で、参考となるのがビジネスキャリア。実業家の足跡をたどると「即断即決」「押しの強さ」「断固戦う」などの特徴が浮かびあがる。同氏の「対日観」は、1980年代のままとの指摘もある。
「不動産王」の名声を確立したのは、1988年のニューヨークの「プラザホテル」買収だ。マンハッタンを象徴する高級ホテルに狙いを定めると、所有者の代理人を呼びつけ、総額4億ドル(当時約500億円)の取引を一気にまとめた。
その代理人トーマス・バラック氏は「即断即決。彼は何が何でも欲しかった」と朝日新聞に語った。自伝でトランプ氏は「ねらいを高く定め、求めるものを手に入れるまで、押して押して押しまくる」と述べている。
苦境でも決して退かずに戦うのも特徴だ。90年代に34億ドルもの借金で、銀行や債権者に追い詰められた。トランプ氏は債権者と直談判し、返済条件を緩めてもらうことを勝ち取った。
当時、交渉に立ち会った銀行員のロバート・マクスウィーン氏は、電話では低姿勢だったトランプ氏が受話器を置くと、笑顔で「俺のやりとりはどうだった?」と話したのを覚えている。「トランプ氏はしぶとく、したたかだった。劣勢でも反転の方策を見いだした」と振り返る。
独裁者的なイメージもあるが、…