独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は18日、世界で計3万人の人員削減に踏み切ると発表した。排ガス規制の不正逃れ問題を受け、環境対応車の軸足をディーゼル車から電気自動車(EV)に移しており、投資の元手を確保するためにコスト削減に踏み切る。
フォルクスワーゲン不正問題
VWグループはアウディやポルシェのほか、VWブランドの乗用車部門、商用車部門など12ブランドに分かれている。削減対象はVWブランドの乗用車部門が中心で、ドイツのVWブランドの乗用車部門の2万3千人を含む。強制解雇はせず、早期退職などで対応する。これにより2020年以降は年間37億ユーロ(約4330億円)のコスト削減の効果を見込んでいるという。
VWは不正問題を受け、遅れていたEVなどの開発を急いでおり、EVや自動運転につながるデジタル技術などに今後数年間で35億ユーロを投じる計画だ。ただ、リコール(回収・無償修理)や訴訟対応などに計182億ユーロを引き当てるなど対策費が膨らんでおり、コスト削減で投資資金を捻出する。
VWの純損益は昨年12月期決算で15億8200万ユーロの大幅な赤字になった後、今年1~9月期は前年同期比49・9%増の57億3800万ユーロと黒字に転換している。ブランド別の営業利益は、ポルシェが前年同期より増益、アウディもほぼ前年並みだが、グループ販売の約6割を占めるVWブランドの乗用車は44%減った。収益回復のため、VW乗用車部門でのコスト削減が課題になっていた。(ロンドン=寺西和男)