国重要文化財に指定されている旧澤原家住宅の三ツ蔵=広島県呉市長ノ木町
戦時下の広島を舞台にしたアニメ映画「この世界の片隅に」が公開されている。主人公・すずが嫁いだ呉は空襲にさらされ、大切なものが失われていく。当時の街並みを再現した映画を見たら、当時と今でどこがどのように変わったのかを知りたくなって街を歩いた。
戦時下の穏やかな日常、あえて描いた こうの史代さん
まずは嫁ぎ先の家があった呉市畝原町(旧上長ノ木町)へ。灰ケ峰の山裾の狭い坂道に沿って住宅が並ぶ。間からは瀬戸内海が見えた。
呉は当時、日本海軍の一大拠点。すずは映画の中で珍しそうに戦艦「大和」を眺めた。記者が訪れた日も海には自衛艦が見えた。約50年間、この地域に住む女性(76)は「高いマンションが建って見える海は小さくなった。でも木製電柱やれんが造りの塀など、街の雰囲気は変わらない」。
坂道を下ると、3棟の蔵が並んでいた。国重要文化財の旧澤原家住宅(長ノ木町)にある蔵で、三ツ蔵(みつくら)と呼ばれる。わらなどを利用した外壁が独特で、映画に何度も登場する。市文化振興課によると、この蔵は広島藩主の休憩所や宿泊所としても使われた。担当者は「市中心部から離れているため空襲の被害を免れました」と話す。
次に旧呉海軍下士官兵集会所(…