試合前にあいさつする熊本工OBと松山商OBたち=26日午後5時15分、熊本市中央区の藤崎台県営野球場、小宮路勝撮影
「奇跡のバックホーム」で知られる1996年夏の全国高校野球選手権大会の決勝。対戦した松山商と熊本工の当時のメンバーが26日、熊本市の藤崎台県営野球場で再戦した。地震で大きな被害を受けた熊本を盛り上げようと企画。最後は「バックホーム」も再現して、集まった500人以上の観客を沸かせた。
【動画】第78回大会決勝、奇跡のバックホーム
平凡な飛球を倒れ込みながら捕るなど体の重さは隠せなかったが、華麗に併殺を決めるなど、20年前をほうふつさせるプレーも随所にみせた。
熊本工の先発メンバーは8人が20年前と同じ。唯一、当時ベンチスタートだった井(い)健太郎さん(38)が一回、先発起用に応えて左翼席に豪快な2点本塁打を放つなど3点を先制。20年前と逆の展開で始まった。だが、松山商も三回に8安打を浴びせて5得点し、逆転。貫禄を見せた。
熊本工は六回に追いつき、なお1死一、三塁。右飛が上がり犠飛と思われたが、松山商の右翼手は「奇跡のバックホーム」を決め、サヨナラ負けを阻止した矢野勝嗣(まさつぐ)さん(38)。三塁走者の野口智史さん(36)はタッチアップしかけたが、途中で戻った。熊本工ベンチからは「行けよ!」と声が飛んだが、野口さんは塁上で「無理、無理」と手を振った。
結局、熊本工が9―8で競り勝ち、敗れた20年前のリベンジを果たした。
試合後には「バックホーム」の場面を再現。矢野さんの返球は本塁をややそれ、熊本工の三塁走者星子崇(たかし)さん(38)が生還。こちらも雪辱した。試合後、星子さんは「やはり松山商との試合はもつれますね。熊本の人に楽しんでもらえたと思う」、矢野さんも「熊本のみなさんに応援してもらい、逆に元気をもらえた」と笑顔だった。