右肩を痛めながらも、今季最後まで打撃投手として投げ続けたDeNAの東野峻
■スコアの余白
東野峻、30歳。巨人、オリックス、DeNAの3球団を渡り歩き、今季はDeNAの打撃投手として腕を振った右腕がこの秋、「投げる」仕事に終止符を打った。野球界を去る覚悟の決断だったが、投げない野球人生を歩むことになった。
スコアの余白2016
1年間で数万球を投げる打撃投手。現役時代から首や肩に故障を抱えていた体は、悲鳴を上げた。6月に右肩の腱(けん)板(ばん)が切れ、車の運転も、髪を洗うのも左手に。選手に打たせる仕事なのに、思うように投げられない。試合前の打撃練習では、ワンバウンドを投げるたびに打者にわびた。
10月、球団に「もう投げられません」と伝えた。打撃投手をやめる以上、退団を覚悟していた。しかし、相手球団の情報などを収集する、スコアラーを打診されたのだ。打撃投手兼任で用具係も務めた東野は、ほぼ全選手の帽子のサイズを記憶した。5年前は巨人で開幕投手を務めた男が、裏方の仕事に徹した。そんな姿が評価されたのだろう。
東野は球団に、そして「特別な先輩」の巨人・内海に感謝している。オリックスをクビになった時、引退を口走った東野に「逃げるな」と内海は励ました。その言葉で受けたトライアウトでDeNAに入団。引退後の道につながった。
今、新たな夢を抱く。「いつか野球の指導者をやりたい」。野球を隅々まで見て、分析するスコアラーの仕事は、その夢に向けても絶好の勉強の場になる。