夫婦と里子のマチェイ君(左から2人目)、マティアーシュ君=チェコ・フルジム
実親のもとで暮らせず、保護が必要な子のうち、日本では約9割が施設で暮らす。だが欧米諸国では、里親などの家庭的な環境で暮らす子が約5~9割を占める。
特集「子どもと貧困」
その一つ、チェコ共和国では6割が家庭的な環境で暮らす。2013年に施設との比率を逆転させた。
原動力の一つが、最長1年の短期里親制度の創設(11年)だ。緊急保護された子をいつでも引き受ける。手当は通常の里親の3倍の月約9万6千円。登録は5年間で3世帯から543世帯に増えた。
三つに分かれていた施設の管轄を一元化し、施設の小規模化も進めた。13年には、子どもの居場所を決める権限を、自治体から裁判所に移す法案が成立した。
施設から家庭的な環境への移行も進めた。
首都プラハから125キロのフルジム。育児放棄を受けたマチェイ君(12)は、里子のマティアーシュ君(6)と一緒に3年前から40代夫婦の家で暮らしている。6歳から9歳まで、20人の子どもと施設で過ごした。「最初は言葉も動作もぎこちなくて驚きました」と夫婦は振り返る。今では、サッカー部で活躍し、成績も優秀だ。定期的に実の母(48)にも会っている。「おばさんのご飯はおいしいし、弟ができてとってもうれしいよ」と笑顔で話す。
社会労働省の責任者は「施設でも条件は悪くないので、施設での養護が普通というのが一般的な認識でしたが、そうではないという意識改革が進んでいます」と話す。
チェコ政府にこうした施策を助言したのは、国際NGO団体「LUMOS(ルーモス)」だ。
LUMOSは「ハリー・ポッタ…