ワチラロンコン新国王の経歴に関する報道が国王に対する中傷、侮辱にあたる可能性があるとして、タイ警察は8日までに、英BBCのバンコク事務所に立ち入るなど不敬容疑で捜査を開始した。
問題となっているのは、新国王即位を受けてBBCが1日にウェブサイトに掲載した「プロフィル・タイのワチラロンコン新国王」の記事。学歴などとともに人物像を報じた。翌日にタイ語サイトに翻訳・掲載されて国王支持者らから批判の声が上がった。警察は容疑の詳細を明かしていないが、素行に関するうわさの部分などが不敬罪にあたると判断した模様だ。
政権は当初、「不敬罪にあたる可能性が高いが、BBCには注意を促して協力を求める」(首相府高官)としていたが、7日にプラユット暫定首相が「タイに事務所を持ち、タイ人記者がいる以上、外国メディアであってもタイの法律に違反すれば訴追する」と警告した。この日、警察がBBCのバンコク事務所を訪ね、関係者から事情を聴いたという。警察はこれに先立つ3日、このBBC記事をフェイスブックに投稿した男性活動家(25)を不敬容疑で逮捕している。新国王即位後初めての不敬事件とみられている。
BBCはウェブ上で「BBCタイはメディア規制が厳しい国において公平、独立、正確なニュースを報じるために設立された。この記事はBBCの編集原則に忠実なものだと自信を持っている」と反論した。
タイの不敬罪は刑法に規定され、国王、王妃らに対して中傷、侮辱、あるいは敵意をあらわにした者を3~15年の禁錮刑に処すると定めている。国際人権団体などは言論の自由の抑圧に同罪が使われる恐れや、不敬行為の定義のあいまいな点などを問題点として指摘している。(バンコク=大野良祐)