長崎市中心部のあちこちで見かける白ポスト=同市築町
長崎市内でふと目に飛び込む白い塔。「子どもに見せてはいけない図書類を入れてください」と呼びかける「有害図書類回収白ポスト」だ。ネット全盛の時代に図書?と思いつつ、中身が気になる。市職員による回収に同行し、ポストについて調べてみた。
「有害図書」の回収は夜中にこっそりではなく、午前9時過ぎに始まった。
職員が最初に向かったのは長崎市中心部の観光名所、眼鏡橋がかかる川のほとり。「子どもたちが学校に行っている間にやっちゃいます」。そう言って職員が白ポスト下部の取り出し口を開けると、肌があらわになった女性が描かれた雑誌がぎっしり。ゴム手袋をはめた職員2人が引っ張り出す。高さ約130センチの白ポストに入っていたのは本やDVDおよそ200点。90リットルのゴミ袋2枚がいっぱいになった。
この日は3カ月に1度の回収日で、職員3人が市内8カ所を回り、市役所駐車場に運んで仕分けをした。
回収されたのは897点、90リットルのゴミ袋で10袋分だ。雑誌類が多く、ディスクの束やビデオテープもあった。「販売業者が置いていったり、町内のゴミ捨て場から運ばれてきたりと、経路はいろいろあるようです」と職員。回収した場所と品目を記録し、その日のうちに市のゴミ処理施設に運ばれて焼却処分された。
市内の白ポストの中には英、中、韓の3カ国語で「ゴミを捨てないで」と書かれたものもある。外国人観光客の多い長崎新地中華街近くの白ポストが食べ残しなどのごみであふれ、周囲に散らかっていたことがあったためだ。ごみ箱と勘違いされたらしい。
市が7月に約10カ所の白ポストに注意書きをしたところ、9月の回収では「有害図書」以外のごみは減ったという。
長崎県内では1964年に長崎、佐世保の両市に白ポストが5台ずつ、初めて設置された。
50年代、暴力や過激な性が描写された本や雑誌が少年非行の原因の一つとされ、全国で「悪書追放運動」が広がった。都道府県は条例で「有害図書」を指定し、青少年への販売を規制するなどした。
それでも成人向けに販売された本が子どもの目に触れるおそれは残る。そこで、兵庫県尼崎市で63年、ドラム缶を白ペンキで塗った「回収箱」を置いたのが白ポストの始まりらしい。その後、各地の自治体などが設置を進めた。
長崎県内の白ポストは増え続け、現在は21市町に84カ所。県によると、老朽化した白ポストは県内の工業高校で、実習の一環として修繕されている。
回収数も増えている。70年代前半には年間200~300点ほどだったが、90年ごろには1500点前後に。2000年代に1万点を超え、近年は1万6千~1万7千点ほど。昨年は1万7090点で、約8500点が書籍類、約6300点がDVDだった。
設置から半世紀あまり。情報の媒体は変わってきたが、白ポストはまだまだ現役のようだ。
県青少年育成県民会議の係長で…