被爆2世のピーターソン・ひろみさん=ホノルル、高野裕介撮影
ハワイでは、安倍首相の真珠湾訪問に対し肯定的な報道が目立つ。地元テレビ局「KITV」はホームページで「安倍、オバマ、歴史的な真珠湾訪問」との見出しで報じた。「我々は二つの文化と二つの国が、栄誉と尊敬をもって前進するのを目にした」と締めくくっている。
特集:首相、真珠湾訪問
地元紙「ホノルル・スター・アドバタイザー」のホームページでは、日米首脳の動きを伝えた上で、2人の演説全文も掲載した。
市民の中には複雑な思いをのぞかせる人もいる。広島生まれの被爆2世で、1972年にハワイに移住したピーターソン・ひろみさん(68)は84年から30年間、オバマ大統領が学んだプナホウ学園の教師を務めた。教科書を自作することにしたが、その過程で、生徒が日米関係を知るには原爆を学ぶことが必要だと思い至った。自身の父らの被爆体験を教科書に盛り込み、原爆投下後の光景は「地獄」と表現した。生徒たちは次第に、その意味を理解するようになったという。
その延長で始めたのが、同学園の生徒を広島に派遣する制度だ。全米各地で採用されるようになった教科書の印税収入を元に、2009年から毎年、生徒2人が広島を訪れ、10日ほど滞在している。原爆ドームなどを見て、核兵器の恐ろしさを肌で感じてもらうのが目的だ。
ピーターソンさんは、安倍首相の真珠湾訪問を「歴史的な一ページだ」と思う一方、引っかかることもあるという。安倍首相が演説で「希望の同盟」と表現した日米同盟が、軍事的な色合いを増していると感じるためだ。安倍政権下で安全保障関連法が施行されたことも気になる。「首脳が2人で真珠湾に立つことは同盟強化のアピールにはなる。でも、本当に大切なのは、日本がどこに向かっていくのかを忘れずに考えることだと思う」(ホノルル=高野裕介、其山史晃)