イタリアの中央銀行は12月29日、同国3位で経営難に陥ったモンテ・パスキ銀行への公的支援額が66億ユーロ(約8100億円)になるとの試算を発表した。モンテ・パスキは不良債権の増加で経営が悪化し、資本不足解消のための増資を目指したが失敗。伊政府が公的支援を決めている。
伊大手銀、自己資本不足1兆円 公的資金注入膨らむ恐れ
欧州中央銀行(ECB)はモンテ・パスキの自己資本の不足額は88億ユーロにのぼるとしている。伊中銀の試算では、この88億ユーロに対し、伊政府が直接注入するのは46億ユーロ。さらに、モンテ・パスキの債券を持つ個人の損失を肩代わりするため、20億ユーロを政府が負担する。残る22億ユーロは、機関投資家が負担する見通し。
欧州連合(EU)の欧州委員会は2016年1月、銀行の公的支援の前に、債券などを持つ投資家に損失を負担させるルールを導入。モンテ・パスキでは、投資家が持つ債券と、価値が落ちた株式を交換する。ただ、イタリアでは年金生活者が債券を持つケースが多く、株式との交換では損失が出かねない。このため、伊政府は債券を持つ約4万人の個人について、額面が同じ別の種類の債券に切り替えられるようにして損失を肩代わりする。
今後は、欧州委が、伊政府のこうした措置を例外的に認めるかどうかが焦点になる。(寺西和男)