2017年は、欧州の未来を占う1年になる。3月のオランダ総選挙を皮切りに、欧州連合(EU)を率いてきたドイツとフランスでそれぞれ総選挙と大統領選が控える。英国はEU離脱に向けて交渉を本格化させる。昨年12月に首相が退陣したイタリアでも、近く総選挙が予想される。各国で広がる「自国第一主義」や「反エリート」のうねりに、欧州統合の理念が試される。
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フランス北東部の「鉄の街」アイアンジュ。雪を模したイルミネーションが街を飾ったクリスマスや年越しにも、浮き立つ空気は乏しかった。
影を落とすのは、鉄鋼世界最大手アルセロール・ミッタルの高炉だ。11年に火を消したまま、街を見下ろすようにそびえる。市は、下請けも含めて影響は2千人に及んだとみる。地元の女性は「レストランは店を閉じ、医者も減った。街は息絶えつつある」という。
ここに、「愛国」を旗印に保護主義を掲げる右翼・国民戦線(FN)が根を張っている。14年の地方選で市政を握り、その後の選挙でも、ほぼ一貫して首位。既存政党への失望が深いからだ。
2基の高炉が休止したのは右派のサルコジ政権期だった。政府は会社側と交渉したが、有効な手は打てないまま。12年の大統領選で左派・社会党のオランド候補は、労組の幹部とともにトラックにのぼり、「工場の買い手を見つけさせる」とぶち上げた。政権を奪うと、一時的な国有化もちらつかせたが、高炉に火は戻らなかった。
近くの街に越したという理学療法士のモニク・プリスクさん(52)は「工場労働者が希望を見いだすのはFNだ」と話す。「反イスラム」などの政策は人々の対立を招くと思いながらも、自身もFNに投票するようになった。支持してきた左派に「ひどくがっかりさせられた」という。
FNは北部カレーでも勢いを増す。中東やアフリカからの難民や移民が住み着いて、一時は1万人規模に膨らんだ巨大キャンプがあった街だ。FN支持の男性(58)は「住み家を追われたフランス人がいるのに、なぜ外国人ばかりに手を差し伸べるのか。もう、うんざりだ」と語った。
FNは、人やモノの自由な移動…