米労働省が6日発表した昨年12月の雇用統計で、景気の動向を敏感に反映するとされる「非農業部門の就業者数(季節調整済み)」は前月に比べて15万6千人増えた。専門家の予想(約18万人の増加)を下回った。
就業者の伸びは11月(20万4千人増)から鈍化したものの、米国では働きたい人すべてが仕事に就ける「完全雇用」に近づいているとされ、堅調な雇用の改善が続いているとみられている。
特に12月は平均時給が前年より2・9%増え、7年半ぶりの高い伸びとなった。賃金の伸びは物価にも影響を与えるため、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が重視している。一方、12月の失業率は4・7%で、11月(4・6%)から悪化した。
FRBは金融政策を決める昨年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、1年ぶりに利上げに踏み切った。先月の会合では、トランプ次期米大統領が大規模な減税やインフラ投資を公約していることから、多くの参加者がより早い利上げペースが必要となる可能性を示唆していた。ただ、FRBはトランプ氏の政策には「相当な不確実性がある」と警戒感も示しており、市場では次回の利上げは6月になるとの見方が多い。
今回の雇用統計はオバマ政権下で最後となる。金融危機時に就任したオバマ大統領と対照的に、トランプ氏は堅調な雇用環境を引き継ぐことになる。(シカゴ=五十嵐大介)