大統領就任式がある米ワシントンの連邦議会前では18日、プラスチック製の床を設置する作業が進んでいた=AP
米共和党のドナルド・トランプ氏(70)が20日(日本時間21日未明)に第45代米大統領に就任するまで、残り1日を切った。トランプ氏は就任演説で、雇用問題などに触れ「共有する価値観や国家としての方向性、直面する課題」などについて語る見通しだ。ワシントンでは多くの抗議デモが予定され、民主党議員がボイコットを表明するなど、異例ずくめの就任式となりそうだ。
トランプ氏は18日、自身のツイッターで、ペンを手に考え込む写真を公開し「3週間前、就任演説を執筆中。(就任日の)金曜日を楽しみにしてほしい」と投稿した。
ホワイトハウス次期報道官のショーン・スパイサー氏は記者団に「トランプ氏は机に向かって演説原稿の推敲(すいこう)を重ねている。100%、彼が主導している。米国のあるべき姿を表現する」と演説の内容を説明。時間は約20分で、雇用創出や移民問題、貿易、インフラ整備について言及するという。
トランプ氏は不法移民の強制送還や環太平洋経済連携協定(TPP)からの撤退など、米国益を最優先する「米国第一主義」を訴えており、こうしたメッセージを発信するとみられる。
スパイサー氏は「大統領令を(就任日に)4、5件発出する」とも語った。中身は明らかにしなかったが、「政権移行に必要な事務的なもので、優先度が高いものだ」と説明した。
また、トランプ氏は新しい農務長官に、ジョージア州前知事のソニー・パーデュー氏(70)を指名した。これで新政権の閣僚候補がすべて出そろった。
トランプ氏は、排外主義的な政策を掲げ、ライバル候補を中傷するという「型破り」の選挙戦で勝利した一方で、世論を分断させた。米メディアなどが調査した就任直前の支持率は40%にとどまり、歴史的な低さを記録している。米当局が見込む就任式の聴衆は70万~90万人とされ、8年前のオバマ大統領の就任時に記録した過去最高の180万人から大幅に減りそうだという。
就任式を欠席することを表明した民主党議員が約60人になったほか、就任日やその前後に約100団体がデモを予定。その大半がトランプ氏に対する抗議デモという。その総計で過去最多の数十万人になることが予想されている。
21日には市民団体が大規模デモ「女性マーチ」を計画。ワシントン・ポスト紙によると、ワシントン郊外の公営駐車場には、就任式の日はバスを駐車する許可申請が200台分だったのに対し、マーチがある翌21日は1200台分の申請があったという。
このため米当局は、警備のために他州からの応援部隊を含め計2万8千人の警官らを投入。米CNNによると、警備費用は1億ドル(約114億円)を超える可能性がある。(ワシントン=佐藤武嗣、杉山正)