名古屋市中村区の住宅で2014年に男性(当時52)が刺殺された事件で、被害男性と長年同居していた同性パートナーの男性清掃作業員(41)が、国の犯罪被害給付制度に基づき、「遺族」として遺族給付金を申請していたことがわかった。申請者男性の代理人弁護士が明らかにした。申請は昨年12月12日付で愛知県公安委員会に出された。
昨年5月の名古屋地裁判決によると、事件は14年12月に発生。男が被害男性を包丁で刺殺し、遺体を台所に隠した。男は懲役14年の地裁判決が確定している。
代理人によると、申請者と被害男性は約20年同居し、申請者の給料を被害男性の口座に入金したり、被害男性が家事や家計を担当したりするなど、夫婦同然の関係だったという。
給付制度が対象とする遺族は、配偶者や子、父母などのほか、事実上の婚姻関係にある相手も含む。代理人は「2人の関係は事実上の婚姻関係に該当する。申請が認められるべきだ」と語った。「LGBT支援法律家ネットワーク」の山下敏雅弁護士は、同性愛者が遺族として申請したケースについて「把握する限りでは全国で初めてだ」と話している。
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〈犯罪被害給付制度〉 犯罪により死亡した被害者の遺族や、負傷したり障害が残ったりした被害者に対し、国が給付金を支給して支援する制度。遺族に支払われる「遺族給付金」の対象は、配偶者(事実上の婚姻関係を含む)、子、父母、孫、祖父母、きょうだい。被害者の年齢や収入などに基づいて算定され、320万~約2964万円が支給される。犯罪被害を知った日から2年以内か、犯罪被害の発生から7年以内に申請し、各都道府県の公安委員会が支給の可否などを決める。