英国が欧州連合(EU)との離脱交渉を始める際に、議会による事前承認が必要かが争われた訴訟で、英最高裁は24日、承認が必要とした一審判決を支持する判決を下した。政府は、判決を受け入れ、近く議会の承認を得るための法案を提出する見通し。
議会では、メイ首相が今月17日に明かした「単一市場からの完全離脱」「移民規制の優先」といった強硬な交渉方針に反対する議員が多い。3月末までに交渉入りするというメイ政権のスケジュール自体については、議会は賛成多数で同意しているものの、審議が紛糾すればスケジュールに修正が余儀なくされる可能性がある。
EU加盟国がEUを離脱する時には、離脱手続きについて定めたEUの基本条約「リスボン条約」50条に基づいて、「離脱通知」をしなければならない。メイ政権は、3月末までに「離脱通知」を行い、交渉を正式に始める方針だ。裁判は、この離脱通知を、議会の承認なしに、政府が行使する「国王大権」で行えるかどうかが争われた。
判決は、一審のロンドンの高等法院が昨年11月に示した判決を踏襲。英国をEUから離脱させる手続きは、EU法の効力を国内に及ぼすことを定めた国内法の効力を失わせると指摘。議会の主権を認めた上で、「国王大権」には、議会が制定した国内法を覆し、国内法で認められた国民の権利を変更する権限はないと判断した。(ロンドン=渡辺志帆)