東日本大震災の津波で84人が犠牲となった宮城県石巻市立大川小学校の避難誘導などを巡り、一部の遺族が市と県に損害賠償を求めた訴訟で、石巻市は7日、「事前防災」の過失を認めた仙台高裁判決を不服として最高裁に上告する方針を固めた。上告期限は10日。
「防災計画」の過失、高裁が一転認定 大川小・津波訴訟
亀山紘市長は7日朝、市議会の丹野清議長に臨時議会の招集を申し入れ、議会側は8日の開催を決めた。市は、臨時議会で上告の承認を求める議案が可決されれば手続きに入る。ただ、「遺族感情を考えれば、裁判での争いをこれ以上続けるべきではない」と上告に否定的な議員も少なくなく、流動的な要素も残る。
亀山市長は記者団に対し、「想定できなかった大災害。校長に高度な知識を要求する判断は、なかなか無理ではないか」と上告の意向を表明。ただ、「議会で承認を得られなければ上告しない」とも述べ、最終的には議会の判断を尊重する方針を示した。県は「市の意向を最大限尊重する」としており、足並みをそろえるとみられる。
二審の仙台高裁判決は、津波が十分予想できたのに事前に具体的な対応を怠ったとして学校側の過失を認め、市教育委員会も不備を指導せず放置したと認定。一審より約1千万円多い約14億4千万円の賠償を市と県に命じた。
一審の仙台地裁判決は、津波の予見は困難として、防災対策に学校側の過失は認めなかった一方、震災当日の避難誘導が不適当と判断。教員らの過失を認定していた。
高裁判決に対し、市の代理人弁護士は「現場の校長や教職員にハードルの高い安全配慮義務を認めた判決で、相当の違和感がある」と判断。亀山市長に上告すべきだと進言していた。(志村英司、岡本進、山本逸生)