1962年の中印紛争後に国境を越えてインド側に迷い込んだまま帰れなくなっていた中国軍の元兵士が11日、54年ぶりに帰国し、故郷・陝西省への帰郷を果たした。中国メディアが一斉に伝えた。
元兵士は王琪さん。国営新華社通信によると、国境付近に工兵として駐屯していた当時24歳の王さんは63年1月、休暇で遊んでいるうちに森林の中で迷い、インド側に入り込んだ。
その後、スパイ罪に問われ、7年間服役。出所後は農村に送られ、現地の女性と結婚した。今は小さな商店を経営している。2男2女に恵まれたが、いつか帰国したいと願い続けていたという。
だが、中印紛争後、両国関係は悪化し、国境も2006年まで44年間閉鎖されていた。中国側では王さんの消息は不明となっていたが、80年代後半に本人から故郷に手紙が届き、無事が確認された。12年に本人がインドの中国大使館に帰国の支援を求め、13年に中国旅券が支給された。中印両国政府の交渉により、ようやく帰国が実現した。
11日は春節(旧正月)を締めくくる「元宵節(げんしょうせつ)」。家族を連れて飛行機で北京に到着した王さんの頭はすっかり白くなっていたが、親族らの出迎えを受け、「今日は一生で最もうれしい日だ」と話した。(北京=延与光貞)