資産価値の見直しが債務超過を招くイメージ
東芝が、半導体事業の一部売却を4月以降に先送りする方針を固め、債務超過を3月末時点で解消できない恐れが出てきた。売却を急いで安く買いたたかれるのを避けるためで、取引金融機関からは3月末の債務超過を容認する意見も出るが、東証2部への降格など代償も大きい。
「3月末の資本がマイナスになると言われているが、半導体の売却を勘案すれば実態的にはプラスとみている」
三井住友銀行の国部毅頭取は16日、全国銀行協会会長としての記者会見で、東芝が3月末に債務超過を解消できない可能性について、銀行側の支援にとっての大きな問題とはならないとの見方を示した。
東芝は3月末に分社化する半導体事業の一部売却について、入札の手続きをやり直して4月以降に先送りする方針。東芝が分社化後も主導権を握ろうと、売却割合を2割弱に抑えた当初の条件は、「経営に関与できない」と応札企業には不評だった。応札額が東芝の希望に届かないなど、交渉が難航していた。
東芝は昨年12月末の自己資本がマイナス1912億円と債務超過に陥る見通し。3月末までに大規模な資本増強ができなければ、決算期末である2017年3月末時点での債務超過の解消は難しくなる。
それでも、業績好調な「虎の子」の半導体事業の株式を安値で手放すのは、長い目でみれば得策でないとの見方に傾いたようだ。今月上旬に開始した入札を仕切り直し、売却割合を5割超に高め、有利な条件を引き出す考え。取引金融機関からも「3月末に無理やり売る必要はない。その方が高く売れる」(幹部)などと、3月末の債務超過への容認論が出ている。
米国の原子力事業を巡る巨額の損失は、過去に買収した企業の資産価値を帳簿上で見直した結果、計上するもので、実際に資金が流出するわけではない。当面の支払いに充てる手元資金は十分にあり、容認論の支えとなっているようだ。