レール上で動けなくなった調査ロボット「サソリ」=国際廃炉研究開発機構提供
東京電力は16日、メルトダウン(炉心溶融)した福島第一原発2号機の格納容器内に調査ロボット「サソリ」を投入したが、駆動部に堆積(たいせき)物が入り込むなどしたため動けなくなった。回収も断念した。サソリは圧力容器直下を撮影し、溶け落ちた核燃料の調査や取り出しに向けたデータを集める重要な役割を担っていた。格納容器内の環境は想像以上に悪く、今後の調査は具体的には決まっておらず手詰まりだ。
東電によると、サソリは16日午前8時ごろに格納容器に入り、7・2メートルある作業用レールを5メートル付近まで進んだが、駆動部が動きにくくなった。レールには堆積物がこびりついており、東電はこうした塊が駆動部に入り込んだとみている。
東電は、電気ケーブルを引っ張って堆積物が少ない場所までサソリを戻し、再び進ませたが完全に動けなくなった。この付近の放射線量は2分で致死量に達する毎時210シーベルトだった。9日に入れた別のロボットは、この付近を毎時650シーベルトと推定していた。
午後3時ごろ、回収を諦めて電気ケーブルを切断し、サソリを残したまま搬入口を閉じた。新たな調査をする場合の障害にならないようにレールの端に寄せたという。
東電は今回の調査で、サソリを圧力容器の下まで入れる計画だった。ここには溶け落ちた核燃料の可能性がある黒い塊が散乱しており、その線量を計測するほか、溶けた核燃料が穴を開けた圧力容器下部も撮影したいとしていた。
東電などは2018年度に核燃料の取り出し方法を決める計画だが、関係者は「サソリにはかなり期待していただけに、この結果はショックだ」と肩を落とした。
国際廃炉研究開発機構によると、福島第一原発1~3号機の格納容器調査にかかる事業費は、14~17年度で計約70億円。(富田洸平、川原千夏子)