米特許商標庁は15日、遺伝子を狙った通りに改変する「ゲノム編集」の新技術について、ハーバード大とマサチューセッツ工科大が共同で設立したブロード研究所が特許権を持つとする決定を出した。先に論文を発表したカリフォルニア大バークリー校のジェニファー・ダウドナ教授らが特許を認めた同庁に異議を申し立て、再審査されていたが、認められなかった。
この特許は、2012年にダウドナ教授と共同研究者のエマニュエル・シャルパンティエ博士(現、独マックス・プランク感染生物学研究所長)らが論文で発表した「CRISPR/Cas9(クリスパー/キャス9)」に関するもの。科学的な発見は2人によるものとみなされているが、巨額の利益につながる特許競争では先を越された形となった。米メディアによると、ダウドナ氏側は、連邦控訴裁判所に訴えることを検討しているという。
ダウドナ教授らは、論文発表にあわせて特許申請をしたが、14年に特許を取得したのはライバル研究者だったブロード研のフェン・ジャン博士らだった。ダウドナ教授らが細菌のDNAを対象にした研究だったのに対し、ジャン博士らは13年に発表した論文で、マウスやヒト細胞にもクリスパーが使えることを示し、特許を申請していた。
クリスパーは、従来の技術より簡単で精度が高く、コストも安いことから急速に広まっている。農作物の品種改良や創薬、医療などに幅広く応用でき、特許を持つ大学や研究所は、数百億ドル規模の収入が見込めるという報道もある。(ボストン=小林哲)