ウイスキーの水割りを飲みながら、がん手術後初の記者会見をする赤塚不二夫=1999年、大阪市中央区
「天才バカボン」や「おそ松くん」で知られる漫画家の赤塚不二夫(1935~2008)が少年時代を過ごした奈良県大和郡山市が、貴重なエピソードを記録にとどめる取り組みを進めている。同級生や遊び仲間から思い出を聞き、少年時代の物語を演劇にする構想もある。「赤塚の育った町」として知名度アップをねらう。
旧満州に生まれた赤塚は敗戦の翌年に引きあげ、母の実家の大和郡山市で小学5年から中学1年の2年余りを過ごした。このときの経験が「おそ松くん」の原風景になったほか、手塚治虫の「ロストワールド」という作品に影響を受け、大阪の出版社に自ら描いた漫画を持ち込むなど漫画家としての出発点でもあった。
市は「偉大な漫画家の作品だけでなく、生き方も残したい」と、昨年6月から聞き取り調査をスタート。赤塚の同級生の故・樋山末広さんの長男貴彦さん(55)や、遊び仲間で一つ年上の山本朗(あきら)さん(82)ら約5人から思い出を聞いた。
例えば、一緒に火事を見に行った年下の男の子が、おそ松くんに登場する「チビ太」のモデル▽ため池に放って石をぶつけた野良猫が翌日、別の場所からにらんでいた。この野良猫が「ニャロメ」のモデル▽近鉄郡山駅近くの貸本屋で手塚の漫画を借りた、などのエピソードが挙がった。シベリアに抑留されていた父が戻ってこないか、毎日のように駅に足を運んでいたという。
市は聞き取りを続け、エピソー…