企業が「天下り」を受け入れると、その人の知見に関わらず公共事業で落札する確率が上がる――。近畿大経済学部の中林純准教授らが、国土交通省の退職者が再就職した建設企業の公共事業の入札結果約3万件を調べたところ、こんな傾向が明らかになった。「天下りが健全な競争を脅かす可能性を裏付けるデータ」としている。
分析したのは、退職後2年以内に在職中の職務と深い関係がある民間企業に再就職した元国交省職員のデータと、同省が発注した公共工事の入札のデータ。いずれも、省庁によるあっせん禁止など天下りの規制が強化された2008年の改正国家公務員法施行前の01年度から04年度のもの。公務員データには退職前5年間の職務や退職時期、再就職企業名、再就職時期が記載。入札データには、入札や契約の時期、入札参加企業名、受注企業名が載っている。
このうち再就職企業名と入札参加企業名を結びつけて、再就職企業の落札確率の変化を調べた。すると、天下りの受け入れ前と後で、落札確率は平均0・7ポイント上昇して10・8%となり、その後も高い水準を維持する傾向があった。
また、退職者の業務経験について事務職と技術職に分けて落札確率への効果を分析したところ、業務経験による差はなかった。中林准教授らは「技術的な知見が落札確率を上げているのではなく、天下りの受け入れの見返りとして落札確率が上昇している可能性がある」と分析している。(沢木香織)