二回裏オーストラリア2死、デサンミゲル(右)に先制の右越え本塁打を浴びた菅野=川村直子撮影
(8日、WBC1次リーグB組 日本4―1豪州)
右翼手の鈴木がジャンプして、めいっぱい左腕を伸ばした。そのグラブの数メートル先。白球はフェンスを越えて、右翼席の最前列に吸い込まれた。
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菅野の、唯一の失投だった。二回。失策で先頭打者を出すも、次打者を二ゴロ併殺に仕留めた直後。7番打者のデサンミゲルを1ボール2ストライクと追い込んだ後の、4球目。外角低めを狙って投げたスライダーが、浮いた。先行を許すソロアーチとなった。
完璧主義者が、結果だけにこだわったマウンドだった。「内容はどうでもいい。とにかく勝つこと」。ふだんは、三振を奪っても納得しないと首をかしげる右腕が、この日はアウトをとるたび、うなずいた。
今回の日本メンバーに、大リーガー投手はいない。小久保監督から「日本で一番いい投手」と言われる27歳は、リーダーとしての自覚もある。合宿中には則本や松井裕ら投手陣をご飯に誘って、言った。「日本の投手のすごさを俺たちが世界にアピールしよう。大リーガー以外にも、いい投手がいるってことを」
だからこそ、結果にこだわった。走者を出しても粘り、4回3分の1を投げて、4安打1失点。五回途中で球数が制限を超えた66球になり、救援陣に後を託した。「要所をしめることを目標に投げた。次に向けて、良いステップが踏めたと思う」。エースの役割は全うしただけに、あの1球が悔やまれた。(山口裕起)