今年は貧困脱却の難関攻略戦に全面的な勝利を収めるうえで最後の年に当たり、残された貧困脱却の難関攻略任務は極めて難易度が高くなっている。そのうち農村の貧困者の中には、病気や身体障害により貧困に陥った人の比率が比較的高く、最も手を焼く課題となっている。しかも、任務が進むにつれて、健康面での貧困者支援という任務はますます困難を極め、病気による貧困者の削減と病気によって再び貧困に戻ってしまう人の増加防止という二重のプレッシャーに直面している。近年、各地では健康面での貧困者支援の強化に主に力を注いでいる。今回紹介する鄧光洪氏は、蔵(チベット)族地区で貧困者支援を行う医療従事者だ。(文/人民日報海外版記者・李富強 羅薇)
四川省甘孜(カンゼ)チベット族自治州徳格県は標高が平均4200メートル、高山気候で、農民の収入源は単一的で牧畜業を主としている。劣悪な気候や地理条件によって、同県の経済は相対的に立ち遅れており、一部の風土病にも長期的に悩まされてきた。
5月31日、重慶市墊江県桂陽街道(エリア)十路村で、現地で貧困を脱却した人の診察をする桂陽コミュニティ衛生サービスセンターの総合家庭医療チーム(孫凱芳/写真著作権は人民図片が所有のため転載禁止)。
2018年6月、鄧氏が所属する成都市第一人民病院では徳格県へ貧困者支援要員を派遣する機会があり、鄧氏は進んで志願した。同月末、鄧氏は徳格県へと向かい、柯洛洞郷燃◆村(◆は上と下が上下に組み合わさった字)の村駐在幹部となり、2年にわたる貧困者支援の任務をスタートさせた。
燃◆村は完全な牧畜区域で、農家133世帯、435人が暮らしており、うち貧困世帯は28世帯、98人。鄧氏と3人の派遣幹部は1部屋20平方メートルほどの広さしかない宿舎で暮らし、県城(県人民政府所在地)に行ってシャワーを浴びられるのは1週間に1回しかなかった。冬は非常に寒く、室内に置いたミネラルウォーターが凍ってしまうほど。だが鄧氏は、「生活条件なんてものは、慣れてしまえばなんでもない」と言う。
村に駐在してから最初に行ったのは、貧困世帯の基本情報をきっちりと調べ、人口情報や住居、羊小屋などの状況を整理して記録に残したことだ。さらに、各貧困世帯の場所を衛星測位システムで測位し、貧困者支援プロジェクト実施のために正確な情報を提供することを可能にした。こうした短期間のうちに、鄧氏は村人、特に貧困世帯の状況をしっかり把握した。
5月14日、湖南省保靖県で県内に暮らす高齢者のために無償で健康診断をする医療従事者(撮影・俞采華/写真著作権は人民図片が所有のため転載禁止)。
農民向けの夜間学校で、鄧氏は村民たちにさまざまな実用的知識を教え、その内容は各方面にわたった。しかし鄧氏が教えたことのうち最も多かったのは疾病の予防・抑制だった。例えば小学生によく見られる疾病の予防や、エキノコックス・結核・変形性骨関節炎の予防・抑制などについてだ。疾病予防・抑制について重点的に知識を広めたのは、それが鄧氏の専門分野だったというだけではなく、貧困地区の人々が貧困に陥る原因のうち、病気による貧困というのが最も主要な要因の一つだったからだ。2年間で、鄧氏は50回以上も講座を開いたが、疾病予防・抑制関連の内容は30回以上に上った。こうして健康の観念は徐々に人々の生活習慣の一部になっていった。
鄧氏は燃◆村のどの貧困世帯にも注意を払ってきたが、特に注目してきたのが土多さん一家だ。
土多ちゃんはてんかんを患っており、よく発作を起こす。母親は毎年息子を大きな都市の病院に連れて行って治療を受けさせているが、その高額な医療費は一家にとって大きな負担となっている。こうした状況を知った鄧氏は、職場の病院に連絡を取り、何度も神経科の主任に診療プランについて問い合わせを行い、そこで知り得た情報を土多ちゃんの母親に伝えることで、生活や食事の面でも色々と配慮させている。
3月20日、西雷陽村を訪れ、健康面での貧困者支援を行う山西省運城市聞喜県医療チーム凹底鎮センターの衛生医療スタッフ(撮影・史雲平/写真著作権は人民図片が所有のため転載禁止)。
2019年7月のある晩、土多ちゃんはてんかんの発作を起こし、昏倒した時に顔面から地面に倒れたため、頭部と目に重傷を負った。鄧氏は土多ちゃんの母親から助けを求める電話を受けると、すぐさま土多ちゃんの家へ行って病情を把握し、県の病院へ連れて行って治療を受けさせた。そして完全に治癒させるため、鄧氏は職場と話をつけて、土多ちゃんを成都市第一人民病院に入院させた。土多ちゃんは入院後、微信(WeChat)で、「鄧さんありがとう!あなたから受けたご恩は一生かけても返せないほどです」というメッセージを送った。
燃◆村には重傷を負って身体障碍者となった村民もいる。鄧氏は彼らが身体障碍者登録をして、身体障碍者証を取得できるようサポートした。そのうち、貧困世帯の阿各さんは昨年11月、民政当局の最低生活保障対象になり、検査や治療、入院などの費用を減免してもらえるようになった。かつては悲観的だった阿各さんは再び生活への意欲を取り戻し、鄧氏を見かけるたびに感謝の気持ちを示しているという。
今年6月、鄧氏の2年間にわたった貧困者支援任務は終わるはずだったが、貧困脱却成果の強化という任務は困難を極めるため、派遣側の手配や本人の希望を考慮して、燃◆村での村駐在貧困者支援の期限を1年延期し、彼は健康面での貧困者支援を徹底的に進めていく予定だ。(編集AK)
「人民網日本語版」2020年11月4日